硬膜外ブロック
まず脊髄とは脳から背骨の中をまっすぐ通る神経群の束のことです。脊髄は硬膜という膜に包まれており、その外側は硬膜外腔と呼ばれています。この硬膜外腔には脊髄から分化した脊髄神経が多く存在しており、手足の領域を支配しています。
硬膜外ブロックとは、この硬膜外腔に麻酔液を注射することにより脊髄神経を麻痺させて痛みが脳に伝わる回路を遮断することで、鎮痛効果を得る治療方法です。
当院では頚部硬膜外ブロック、胸部硬膜外ブロック、腰部硬膜外ブロック、仙骨部硬膜外ブロックとすべての硬膜外ブロックを行うことができます。特に、頚部と腰部硬膜外ブロックについて高頻度で行っています。
硬膜外ブロックの効果
硬膜外ブロックは、痛みの感覚を脳に伝えないようにする治療です。そのため効果は一時的なものではないかと不安に感じる方もいらっしゃいます。
硬膜外ブロックを打つことにより、交感神経の興奮を抑え、副交感神経が活発化することで血流が改善して痛みの原因物質の代謝に繋がります。このように痛みを感じるサイクルを断ち切る効果も期待できるため、持続した効果が得られることが考えられています。
また、運動神経にも麻酔の効果は影響するため、過度な筋肉の緊張が原因となる痛みを緩和することがあります。
硬膜外ブロックと神経根ブロックの違い
硬膜外ブロックは、感覚神経と交感神経の両方を遮断します。運動神経も少し遮断します。
神経根ブロックは、体性神経(運動神経・感覚神経)を優位に遮断しますが、一部交感神経にも作用します。
これらは患者様の状態によって使い分けされます。
対象となる症状や疾患は?
症状
硬膜外ブロックによって、主に脊髄神経から生じる症状である、首、腰に関連した症状を緩和することができます。
首の付け根から肩から腕、手の痛み、腰痛、太腿から足先にかけての痛みなど様々です。
疾患
適応疾患としては、頚椎椎間板ヘルニア、頚椎症性神経根症、頚椎症性脊髄症、ぎっくり腰、腰部脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニア、腰椎すべり症などの整形領域の疾患はもちろんのこと、帯状疱疹や帯状疱疹後神経痛に対しても治療効果が認められています。
硬膜外ブロックの治療の流れ
1準備
医師による説明を行います。
事前にトイレは済ませてください。看護師が血圧測定した後にベッドの上でブロック注射の準備をします。
頚部および仙骨部硬膜外ブロック➡うつぶせ体位
胸部および腰部硬膜外ブロック➡横向き体位で行っています。
しかし、骨の変形がひどい場合は、レントゲンを見ながら行うためレントゲン室へ移動していただきます。
2硬膜外ブロック注射施術
感染症予防のため消毒をしてから神経ブロック注射を行います。
消毒剤にアレルギーをお持ちの方は必ず申し出てください。
注射自体は1~2分で終了します。
3安静
麻酔が効いている間は転倒のリスクがあるため、ベッド上で30分程度安静にしていただきます。
途中経過を適宜スタッフが確認しに参ります。
30分経過した段階で、問題ないようでしたら終了となります。
4注射終了
最後に医師による診察を受けて終了です。
お気をつけてご帰宅ください。
硬膜外ブロックの注意事項や
副作用
注意事項
硬膜外ブロックを受けた当日はシャワー浴のみお願いします。
ブロック注射後3時間は運動や飲酒は控えてください。
また以下に当てはまる方は硬膜外ブロックが打てないので事前にご確認ください。
- 注射部位に炎症や細菌感染がある方
- 血液サラサラの薬を服用中の方
- 麻酔等にアレルギーのある方
副作用や合併症
注射手技を伴う医療行為のため副作用のリスクは存在します。
- 細菌感染
- 下半身の麻痺症状、しびれ、脱力感
- 一時的な低血圧、立ちくらみ
- 麻酔の中毒症状による痙攣
万が一これらの合併症が疑われる場合には、当院にて適切な対応ができるよう万全を期しております。
硬膜外ブロックの費用の目安
ブロック注射は保険適応での治療が可能です。
そのため1~3割負担となっておりますが、症状や検査内容によって多少変動いたします。
例
- 頚・胸部硬膜外ブロック:1〜3割(1,500〜4500円)
- 腰部硬膜外ブロック:1〜3割(800〜2400円)
- 仙骨部硬膜外ブロック:1〜3割(340〜1028円)
詳しくは当院のスタッフへお尋ねください。