スポーツ傷害とは
スポーツ傷害とは、スポーツを続けることによって引き起こされる障害である「スポーツ障害」と、スポーツによる運動器(骨や筋肉などの身体運動にかかわる組織)の外傷である「スポーツ外傷」との2つの事柄を指します。
スポーツ障害 | スポーツ中の動作により、関節、靭帯、骨などに繰り返し力が加わることで引き起こされる障害(疲労骨折・シンスプリント・テニス肘など) |
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スポーツ外傷 | 運動中のぶつかり合いや、体の一部を捻ったりすることによる怪我(骨折・捻挫・靭帯損傷など) |
スポーツ傷害の原因
成長期
成長期の子供は、骨が急激に成長するので関節周囲の筋肉や靭帯が引っ張られます。運動をするしない関係なく、これらの組織に伸展力(筋肉等を伸ばそうとする力)が加わります。成長期の子供の骨には関節の周囲に骨端線という組織があり、そこに伸展力が過度に加わると、骨端線離開という骨の障害を引き起こすことがあります。
過度な練習量
部活動では試合の勝ち負けにこだわる傾向が強まりますので、練習量もそれによって増加する傾向があります。部活動においても、部員それぞれに適度な練習量を考慮することが必要です。
準備運動の不足
部活動の時間が限られることにより、ストレッチなどの事前の準備運動が軽視されがちになります。
運動の正確性
成長期の子供にあった指導方法が必要ですが、なかには自己流のトレーニング方法や間違ったフォームで練習している方はスポーツ障害を招くことがあります。
スポーツ傷害の症状と種類
肩の痛み
野球肩、投球障害肩(腱板炎、関節唇損傷、腱板損傷、肩峰下滑液包炎、)、リトルリーグ肩
肘の痛み
野球肘(離断性骨軟骨炎)、ゴルフ肘(上腕骨内側上顆炎)、テニス肘(上腕骨外側上顆炎)
腰の痛み
椎間板ヘルニア、腰椎分離症・分離すべり症、梨状筋症候群、深臀部症候群、
膝の痛み
ジャンパー膝、サッカー膝、ランナー膝、分裂膝蓋骨、離断性骨軟骨炎、腸脛靭帯炎、鷲足炎など
足の痛み
疲労骨折、扁平足、シンスプリント、有痛性外脛骨、アキレス腱炎、踵骨骨端症、三角骨障害、足底筋膜炎
主なスポーツ傷害
スポーツ傷害のうち、主なものは以下の通りです。
オスグッド病
オスグッド・シュラッター病とも言い、成長期の子供に多い病気です。
膝関節の過剰な屈伸運動により、膝蓋靭帯が付着する脛骨粗面に負荷がかかり、膝前部~下部に痛みや皮膚の赤み、熱っぽさを生じる病気です。
足関節捻挫
多くが足首を内側に捻ってしまうことで生じる捻挫です。軽度なものは靭帯のごく一部の断裂で軽度の腫れや痛みがある程度ですが、重度のものは靭帯が完全に断裂してしまい、強い腫れや痛みがあり皮下出血を伴う場合もあります。体重をかけると痛みが悪化します。
腰椎分離症
別名、腰の疲労骨折とも言われる疾患です。
スポーツ中に体を沿ったり、腰を捻ったりすることにより、腰椎に過度なストレスを受けることが原因です。放置すると腰椎骨折や、腰の神経を圧迫して足の痛みやしびれを生じる場合はがあるので早めの治療が必要です。
肉離れ・筋挫傷
筋挫傷とは、人とぶつかるなど「外部」から筋肉へダメージが原因で発症する筋損傷のことです。
肉離れとは、「外部」からのダメージが原因ではなく自分自身で過負荷なスポーツをしたなど「内部」の要素が原因で発症する筋損傷のことです。
治療方法としては、RICE療法です。それにより出血や腫れを軽減させます。場合によったら松葉杖を要することも少なくないです。
膝前十字靭帯損傷
膝関節の両側にあって膝の左右の動きを抑え、その安定性を保つ機能を持つ前十字靭帯が断裂する疾患です。スポーツでダッシュのような瞬発的な動きをしている時に急に方向転換をしたり、ジャンプの後に着地をする際に膝を捻ったりすることで起きるものです。
肩関節脱臼
腕の骨である上腕骨と肩甲骨とでできている肩関節が外れてしまう怪我です。肩関節に大きな力がかかった時に起こる場合が多いです。脱臼に伴って骨折する場合もあります。
疲労骨折
通常の骨折とは異なる原因による骨折です。比較的小さな力が繰り返し骨のかかることで骨にひびが入ったり、完全に折れたりする骨折のことです。スポーツ選手が短期間で集中的にトレーニングを行う場合などに起こりやすいです。
アキレス腱断裂
アキレス腱とは足のかかとの後ろにあるピンと張った腱のことです。このアキレス腱が踏み込みやジャンプ、着地動作などの激しい運動を行った時に断裂してしまうものを言います。あるは、競技プレー中に振り返った時などに生じやすいです。
膝の慢性障害
走ったり、ジャンプをしたりといった動作を行うことで、膝に力が加わり続けることになり、靭帯や腱が損傷したり炎症を起こして膝に痛みなどの障害を起こすものです。
足の慢性障害
スポーツなどを原因として足のいろいろな部位に痛みを生じる病気です。障害部位によって様々な痛みがありますが、原因はランニングやジャンプが多いスポーツで、足の筋肉や腱に衝撃が頻繁に及ぶためであるとされています。足の柔軟性低下や扁平足による痛みこれらに含まれます。
鼠径部症候群(グロインペイン症候群)
運動時に鼠径部(太ももの付け根・股関節の前)に痛みを生じるものを言います。サッカーなどのボールを蹴るスポーツで発症することが多く、一旦発症すると治りにくい傾向があります。慢性化する前に適切な治療が必要です。
シンスプリント・疲労骨折
シンスプリントとは、骨周囲にある骨膜や筋などの炎症です。下腿(膝から足首)のすね内側の中央から下方1/3に痛みが発生しやすいです。
疲労骨折とは、微小な繰り返しのダメージが蓄積することで発症する微小骨折のことで跳躍型と疾走型に分類されます。
- 跳躍型:脛骨の前中央部に多くジャンプをする競技に多いです。
- 疾走型:脛骨の近位または遠位内側~後方に多くランニングなどの繰り返しの競技に多いです。跳躍型より頻度は高いです。ダッシュやジャンプを繰り返すスポーツ時に起こりやすいものです。脛骨(膝から足首)のすね内側の中央から下方1/3に痛みが発生しやすいです。
野球肩・肘
成長期に東急しすぎることや間違った投球フォームにより肩や肘に障害を起こすものを言います。繰り返しの投球で肩や肘への異常な負担が原因で、腕の伸びや曲がりが悪くなったり動かすと痛みを感じたりします。
股関節インピンジメント
股関節を過度に屈曲させることが多いスポーツなどで起こるもので、股関節の大腿骨頭と臼蓋の骨同士がぶつかり股関節を損傷してしまうものです。
骨盤剥離骨折
運動中に急激な方向転換やランニング、ジャンプなどによって骨盤にある骨端線(成長軟骨)が剥離骨折を起こすものです。
症状としては、痛みや腫れのほか、重症になると感覚障害や歩行困難を生じます。
仙腸関節障害
仙腸関節(骨盤の骨である仙骨と腸骨の間にある関節)に負担がかかることで障害が起こるものです。サッカーやソフトボールなど、片足に強い荷重がかかるスポーツにおいて起こりやすい病気です。腰痛と関連して発症することもあります。
リトルリーグ肩
成長期に投球を繰り返すことで肩に起こる障害です。投球のし過ぎや手投げの投球など間違ったフォームまま練習を続けることで発症するとされています。
円板状半月板
円板状半月板とは、通常の半月板とサイズが異なり大きい半月板になります。大きい半月板は傷みやすく軟骨損傷を起こしやすいです。症状は、膝痛や膝が伸びにくい、膝が引っかかるなどです。
治療は、手術が必要になり半月板を一部切除します。
スポーツ傷害の診断と検査
骨折の場合はレントゲン検査で判定可能です。しかし、レントゲンで判断できないような微小骨折やヒビを疑う場合はCTやMRI検査を行います。
スポーツ傷害の治療法
スポーツ傷害になった場合は、その症状にもよりますが、一般的には「RICE処置」の考え方に基づいて治療を行います。
○Rest(安静)
筋肉や靭帯、血管の損傷を悪化させないよう、痛めた部位を包帯などによって固定し安静に保ちます。
○Icing(冷却)
痛めた部位の炎症を抑えるため氷水の入った袋や保冷剤で冷やします。
○Compression(圧迫)
痛めた部位の腫れを抑えるため包帯やタオルなど圧迫します。
○Elevation(挙上)
内出血の量を抑えるため、痛めた部位を心臓よりも高い位置に固定します。
スポーツ傷害の予防
スポーツ傷害の予防には、運動前には十分な準備体操やストレッチなどで体をほぐします。運動後には十分にクールダウンを行い身体のコンディションを整えることが重要です。
さらに、定期的なメディカルチェックにより自身の身体の状態を常に把握することも傷害の予防に役立ちます。
また、普段の練習で使用している運動用具やユニフォームなどの大きさや重さ、材質が自分の体に合っているかの確認も重要です。
スポーツ傷害は再発するケースが非常に多いです。再発防止のためには、上記のような準備運動やクールダウンを励行するほか、少しでも異常を感じたら早くかかりつけ医に相談するようにしましょう。
気になる症状がある方はご来院ください
スポーツ傷害は重症化すると日常生活にも影響する可能性があるため、気になる症状がある場合は早めにかかりつけ医に相談することが必要です。
医師の診断を受けたからといって、必ずしも今まで行っていたスポーツをまったく行ってはいけないということにはつながりません。かかりつけ医の先生とよく相談しながらスポーツ傷害と上手く付き合っていくようにしましょう。
大阪みま整形外科&痛みのクリニックは、スポーツ傷害に悩まれる患者様の良き相談相手としてサポートさせていただきます。