腱鞘炎
骨と筋肉を繋いで各部を動かす働きをする腱は、腱鞘というトンネルの中でスムーズに動くようになっています。
手の使い過ぎや、何らかの原因によって腱鞘が狭くなった場合などに、腱と腱鞘の間の摩擦で炎症が起こり、指や手首の関節に腫れや痛みが生じる疾患を「腱鞘炎(けんしょうえん)」と言います。
ばね指
「ばね指」は、肘や手首と同じく、指の使い過ぎが原因で起こる「指の腱鞘炎」です。指の痛みやこわばりが特徴で、進行すると、指が曲がったまま戻らなくなり、強い力で無理に治そうとするとばねのように跳ねて戻ることから「ばね指」と言われています。
放置していると少しずつ症状が進行してしまうので、早期の受診と治療で、正しいケアを行うことが大切です。
ばね指の原因
日頃から、指を使い過ぎている人は、腱と腱鞘に常に大きな負荷がかかっているため、炎症が起こりやすくなります。
特に以下のような動作は、ばね指の原因になりやすいと考えられています。
- パソコンのキーボードやマウスの操作
- ゴルフ、テニスなどの手を使うスポーツ
- ピアノなどの指を酷使する楽器の演奏
など
また、女性の場合は、妊娠や閉経などで女性ホルモンの分泌が低下し、腱や腱鞘自体がもろく傷みやすくなるため、ばね指を発症する可能性が高まります。
ばね指の症状
- 手の平側の指の付け根に、圧痛、腫れ、熱を感じる
- 指の曲げ伸ばしが滑らかではなく、途中で引っかかる感じがある
- 起床時に指がこわばり、動かしにくいことがある
- 指が曲がったまま戻らない
- 曲がった指を無理に戻そうとして力を入れると指がはねる(ばね現象)
など
上記のうち1つでも当てはまれば、「ばね指」の可能性があります。
ばね指は、どの指でも発症する可能性がありますが、特に、親指、中指、薬指に多く見られます。起床時に症状が強く、手を使っているうちに症状が改善するのが特徴です。
初期のうちは軽い痛みや違和感だけで、安静にしていれば回復することが多いですが、症状が進行するにつれ、次第に強い痛みやばね現象が現れるようになります。重症になると、指がまったく動かなくなることもあります。
ばね指の検査と診断
問診や触診を行い、指の腫れや痛み、ばね現象の有無の確認で診断します。また、骨の異常の有無や似たような疾患との鑑別のために、レントゲン検査を行う場合があります。同様に他の原因の検査や、実際に引っかかりのある部位などを確認するため、超音波検査、MRI検査を行うこともあります。
ばね指の治療法
ばね指の治療法は、症状を改善させるための「保存療法」と、根治を目指す「手術療法」の二種類があります。
保存治療
リハビリテーション
超音波や電気による治療を行うことで、治療器の刺激が患部の奥深くにまで作用し、血行改善や痛みを緩和します。
また、理学療法士によるマッサージ、ストレッチ、筋トレなどのリハビリテーションは、即効性はありませんが、中・長期的に見ると治療効果がもっとも高いという調査報告もあります。
薬物治療
炎症や痛みがある場合は、湿布や塗り薬、非ステロイド性消炎鎮痛剤などの薬物治療により、痛い部位の炎症を抑え、痛みを緩和します。
注射
物が持てない、仕事に支障が出るなど、強い痛みやばね指を繰り返している場合は、ブロック注射を行う場合があります。
注射によって痛みを緩和させながら、並行して根本原因をリハビリテーションで改善させ、トータルでの症状改善をめざします。
手術治療
保存治療を行っても、なかなか改善しない場合や、再発を繰り返すような場合には手術を検討します。
手術は、痛みの元となっている腱鞘を切開し、その一部を切り離すことで、症状を改善します。
1㎝程度の切開で済み、所要時間も15分程度と短いため、日帰りで行うことが可能ですが、手術後一週間程度は手を濡らさないように気を付ける必要があります。
多くの場合は、再発の可能性ほとんどなくなりますが、手術の影響で屈筋腱の滑走が悪くなり、指を動かしにくくなることもあります。
手術後のリハビリテーションで屈筋腱の動きを改善することも大切です。
ばね指でやってはいけないこと
無理に伸ばす
痛みや腫れが落ち着いてから、ゆっくりと手を広げて、指の一本一本を伸ばすストレッチは効果的です。ただし、腱や腱鞘に炎症がある状態で無理に伸ばしたり、力加減を間違えたりすると、かえって悪化させてしまう恐れがあります。
無理にマッサージする
腱や腱鞘に炎症がある状態で無理にマッサージをすると、痛い部位への負担になる可能性があります。マッサージにより痛みが増したりこわばったりした場合は、すぐ安静にしてください。
放置する
症状が軽ければ、安静で改善する可能性も少なくありません。ですが、症状が軽くても安静にできない環境の場合、状態が悪化してしまう可能性があります。